結論から言うと、IT補助金(IT導入補助金)でバーチャルオフィスの月額費用を賄うことはできない。 ただし、バーチャルオフィス利用者がITツールの導入費用に対してIT補助金を申請すること自体は可能だ。
バーチャルオフィスで事業をしていると、「補助金って使えるのかな」と一度は考えるだろう。特にIT導入補助金は中小企業・個人事業主向けの制度として知名度が高い。僕自身、GMOオフィスサポートの住所で合同会社を運営しているので、補助金が使えるかどうかは気になるテーマだった。
この記事では、IT補助金の対象経費にバーチャルオフィス費用が含まれるのか、VO住所での申請は問題ないのか、そしてバーチャルオフィス利用者が活用しやすい補助金制度について整理する。
GMOオフィスサポートで合同会社を運営中。IT補助金の申請経験はないが、制度の仕組みを調べて客観的にまとめている。
IT導入補助金の概要
まず、IT導入補助金がどんな制度なのかを押さえておこう。
IT導入補助金とは
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者がITツール(ソフトウェアやクラウドサービスなど)を導入する際の費用を一部補助してくれる国の制度だ。正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」で、経済産業省が管轄している。
目的は、ITツールの導入によって業務効率化や売上向上を図る事業者を支援すること。会計ソフト、受発注システム、顧客管理ツール(CRM)、ECサイト構築ツールなど、事前に登録されたITツールの導入が対象になる。
補助対象と補助率
IT導入補助金にはいくつかの枠(申請類型)がある。年度によって枠の名称や内容は変わるが、基本的な構造は以下の通りだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 中小企業・小規模事業者(個人事業主含む) |
| 補助対象 | 事前登録されたITツールの導入費用 |
| 補助率 | 1/2〜3/4(枠によって異なる) |
| 補助額 | 数万円〜数百万円(枠によって異なる) |
| 申請方法 | IT導入支援事業者と共同で申請 |
ポイントは、事前に「IT導入支援事業者」に登録されたベンダーが提供するITツールでなければ補助対象にならないという点だ。自分で好きなツールを買って「補助金ください」とはいかない。
申請の基本的な流れ
IT導入補助金の申請は、以下のような流れになる。
- gBizIDプライムの取得(法人の場合は法人番号で取得)
- IT導入支援事業者への相談(導入したいツールを扱う事業者を探す)
- 交付申請(IT導入支援事業者と共同で申請書を作成・提出)
- 交付決定後にITツールを導入(決定前に購入すると対象外)
- 事業実績報告(導入後に報告書を提出)
- 補助金の交付
注意すべきは、交付決定の前にITツールを購入・契約してしまうと補助対象外になること。先に申請して採択を受けてから導入する、という順番を間違えないようにしたい。
交付決定の「前」にITツールを購入・契約すると、その費用は一切補助されない。「先に買って後から申請」はできないため、必ず採択通知を受けてから導入すること。
バーチャルオフィスの費用はIT補助金の対象になるか
ここが一番気になるところだろう。結論を改めて言うと、バーチャルオフィスの月額費用はIT補助金の対象経費にはならない。
対象経費はITツールの「導入費用」
IT導入補助金の対象経費は、あくまでITツール(ソフトウェア)の導入にかかる費用だ。具体的には以下のようなものが該当する。
- ソフトウェアの購入費・利用料(クラウドサービスの場合は最大2年分)
- 導入に伴うコンサルティング費用
- ハードウェア(PC、タブレット等)の購入費(一部の枠のみ)
バーチャルオフィスは「住所を借りるサービス」であり、ITツールではない。たとえ申込みや契約がオンラインで完結するサービスだとしても、ITツールとしては認定されていない。そのため、月額利用料や初期費用を補助金で賄うことはできない。
バーチャルオフィスの利用料に限らず、以下のような経費もIT導入補助金の対象外だ。
- オフィスの賃料・共益費
- 人件費
- 広告宣伝費
- 交通費
- 事前登録されていないITツールの費用
VO利用者がITツールを導入する費用は対象になりうる
ここを混同している人が多いのだが、バーチャルオフィスの費用が対象にならないことと、バーチャルオフィス利用者がIT補助金を使えないことはイコールではない。
「VO費用が対象外」=「VO利用者は補助金を使えない」ではない。バーチャルオフィスで事業を営んでいても、ITツールの導入費用には問題なく申請できる。
バーチャルオフィスの住所で事業を営んでいる法人・個人事業主が、業務効率化のためにIT導入支援事業者が提供するITツールを導入する場合、そのITツールの導入費用にはIT補助金を申請できる。
たとえば、こんなケースだ。
- バーチャルオフィスで法人登記している会社がクラウド会計ソフトを導入する
- 個人事業主がECサイト構築ツールを導入して販路を拡大する
- 顧客管理システム(CRM) を導入して営業効率を上げる
これらの費用は、IT導入補助金の対象になりうる。バーチャルオフィスを使っているかどうかは関係ない。
バーチャルオフィスの住所でIT補助金を申請できるか
次に気になるのが、申請時の住所要件だ。「バーチャルオフィスの住所で補助金を申請して大丈夫なのか」という疑問である。
法人登記されていれば問題ない
IT導入補助金の申請要件に「実体のあるオフィスを構えていること」という条件はない。法人であれば法人番号に紐づく住所、個人事業主であれば開業届に記載した住所で申請する。
バーチャルオフィスの住所で法人登記をしている場合、その住所で問題なく申請できる。gBizIDプライムの取得も、登記上の住所で行える。
注意点:事業実態の確認
ただし、補助金全般に言えることだが、事業の実態があることは大前提だ。補助金は「事業を営んでいる事業者」に対して交付されるものなので、ペーパーカンパニーのような実態のない法人では当然申請は通らない。
補助金の申請には事業の実態が必須。売上の発生や事業活動の実績がない場合、バーチャルオフィスの住所で申請しても審査は通らない。
バーチャルオフィスで事業をしていて、実際に売上が発生しているか、事業活動を行っている実態があれば問題ない。この点はバーチャルオフィスと融資の話にも通じる部分がある。
IT補助金の申請にはgBizIDプライムが必要だ。取得には数週間かかることがあるため、補助金の公募開始前に早めに取得しておくのがおすすめ。法人番号と登記住所があれば、バーチャルオフィスの住所でも問題なく取得できる。
バーチャルオフィス利用者が活用しやすい補助金制度
IT導入補助金以外にも、バーチャルオフィスで事業を営む事業者が活用できる補助金制度はある。代表的なものを紹介する。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化に取り組む小規模事業者を支援する制度だ。日本商工会議所が事務局を務めている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 従業員数が一定以下の小規模事業者 |
| 補助率 | 2/3 |
| 補助上限額 | 50万円〜200万円(枠による) |
| 対象経費 | 広告費、ウェブサイト関連費、開発費など幅広い |
IT導入補助金との大きな違いは、対象経費の範囲が広いことだ。ウェブサイトの制作費、チラシの印刷費、展示会への出展費用なども対象になる。
バーチャルオフィスを利用しているような小規模な事業者にとっては、IT導入補助金よりもこちらの方が使いやすいケースが多い。ウェブサイトの構築やリニューアル、オンライン広告の費用などに充当できるのは大きい。
申請には商工会議所(または商工会)の支援を受ける必要があるので、まずは最寄りの商工会議所に相談してみるといい。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新たな事業展開に取り組む中小企業を支援する制度だ。コロナ禍をきっかけに始まった制度で、事業の転換や新分野への進出を計画している事業者が対象になる。
補助額が数百万円〜数千万円と大きいため、事業の大幅な方向転換を考えている場合に検討の余地がある。ただし、申請のハードルは高く、認定支援機関と連携した事業計画の策定が必要だ。
バーチャルオフィスの住所で申請すること自体に問題はないが、事業の実態や成長性がより厳しく審査される。
ものづくり補助金
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。革新的なサービスの開発や試作品の制作、生産プロセスの改善などを支援する制度だ。
IT系の事業で新しいサービスを開発する場合などに使える可能性がある。補助額は最大で1,000万円前後(枠による)と大きいが、その分審査も厳格だ。
正直なところ、バーチャルオフィス利用者のような身軽な事業形態だと、まずは小規模事業者持続化補助金かIT導入補助金あたりが現実的だと思う。事業規模が大きくなってきたら、事業再構築補助金やものづくり補助金も選択肢に入ってくる。
補助金を活用する際の実務的なポイント
バーチャルオフィス利用者が補助金を活用する際に、知っておくと役に立つポイントをまとめる。
経費の管理は厳密に
補助金は事後精算(後払い)が基本なので、先に自分で費用を立て替える必要がある。また、対象経費の支出を証明するための帳簿・領収書の管理が求められる。
バーチャルオフィスの費用は補助対象外だとしても、経費として計上することは可能だ。補助対象の経費とそうでない経費を明確に区分して管理しておくことが大切である。
補助金の対象経費と対象外の経費(VO利用料など)は、帳簿上で明確に分けて管理しておくと、申請時の事業実績報告がスムーズになる。
税理士・専門家への相談がおすすめ
補助金の申請書類の作成は、慣れていないとかなり手間がかかる。特に事業計画書のパートは、審査員に「この事業者に補助金を出す価値がある」と思わせる内容にする必要がある。
税理士や中小企業診断士、認定支援機関に相談すれば、申請のポイントを教えてもらえるし、書類の作成サポートを受けられる場合もある。費用はかかるが、採択率を上げるためには有効な投資だ。
これは融資を受ける際の対策でも書いたが、お金が関わる公的制度の活用では、専門家のサポートを受けるのが堅実な判断だと思う。
公募スケジュールに注意
補助金には公募期間がある。年に数回の公募が行われるが、締切を過ぎると次の公募まで待つ必要がある。
各補助金の公募スケジュールは、以下の公式サイトで確認できる。
- IT導入補助金:IT導入補助金公式サイト
- 小規模事業者持続化補助金:商工会議所の公式サイト
- 事業再構築補助金:事業再構築補助金公式サイト
制度の内容や公募スケジュールは年度ごとに変更される可能性があるため、申請を検討する際は必ず最新の公式情報を確認してほしい。
補助金の制度は毎年見直しが入る。ネット上の情報が古いケースも多いので、必ず公式サイトや中小企業庁のページで最新情報を確認すること。商工会議所の窓口相談を活用するのも手だ。
まとめ:VO費用は対象外だが、IT補助金の活用自体は可能
バーチャルオフィスとIT補助金の関係をまとめると以下の通りだ。
- バーチャルオフィスの月額費用はIT補助金の対象にならない(ITツールではないため)
- バーチャルオフィス利用者がITツール導入費用に対して申請することは可能
- VO住所での申請に問題はない(法人登記されていれば可)
- 小規模事業者持続化補助金の方が対象経費が広く、使いやすいケースも多い
- 申請前にgBizIDプライムの取得と専門家への相談を済ませておくのがおすすめ
僕自身はIT補助金を申請した経験はないが、バーチャルオフィスの住所で銀行口座の開設も法人登記も問題なくできている。住所がバーチャルオフィスであること自体が、公的制度の利用を妨げるケースは思ったより少ない。
バーチャルオフィスの費用を抑えつつ、ITツール導入の補助金を活用できれば、事業のコスト効率はさらに良くなる。興味がある方は、まずは商工会議所やIT導入支援事業者に相談してみてほしい。
バーチャルオフィス選びでまだ迷っている方は、主要10社の比較記事も参考にどうぞ。コストを重視するなら経費はいくらかかる?の記事もあわせてチェックしてほしい。


