「バーチャルオフィスを使いたいけど、自分の業種だと許認可が取れないかもしれない」
許認可が必要な業種で起業を検討している方にとって、これは切実な問題だろう。結論を先にお伝えすると、バーチャルオフィスでも取れる許認可と、取れない許認可がある。
建設業許可(一般)や古物商許可は取得可能だが、人材派遣業や有料職業紹介事業のように「独立した事務所スペース」が要件になっている許認可はバーチャルオフィスでは取れない。この記事では、業種別の取得可否を整理したうえで、許認可が必要な業種でバーチャルオフィスを活用する方法を解説する。
なお、許認可の要件は法改正や行政の運用変更によって変わる可能性がある。最終的な判断は、必ず管轄の行政機関に確認してほしい。
筆者はIT系の事業を2名で運営しており、許認可は不要な業種。GMOオフィスサポートで法人登記して約半年、問題なく事業を続けている。許認可が必要な業種の方向けに、一般的な情報を整理した記事だ。
バーチャルオフィスで取れる許認可・取れない許認可の一覧
まず全体像を把握しておこう。バーチャルオフィスの住所で取得できる許認可と、取得が難しい許認可を一覧にした。
取得できる(可能性が高い)許認可
| 許認可 | 管轄 | 備考 |
|---|---|---|
| 建設業許可(一般) | 都道府県知事 | 経営業務管理責任者の常勤要件を満たせれば取得可能。ただし「営業所」の定義に注意 |
| 古物商許可 | 警察署 | バーチャルオフィスでの取得事例あり。警察署によって判断が分かれることもある |
| 酒類販売業免許(通信販売) | 税務署 | 通信販売に限定すれば、実店舗がなくても取得できるケースがある |
| 宅建業免許 | 都道府県知事 | 条件付き。独立した事務所区画があるレンタルオフィスなら可能だが、純粋なバーチャルオフィスでは厳しい場合も |
取得できない(難しい)許認可
| 許認可 | 管轄 | 取得できない理由 |
|---|---|---|
| 人材派遣業(労働者派遣事業) | 厚生労働省 | 20平米以上の専用事務所スペースが必要 |
| 有料職業紹介事業 | 厚生労働省 | おおむね20平米以上の事務所が必要。プライバシー保護のため個室も求められる |
| 探偵業 | 公安委員会 | 営業所の実態(固定電話・看板等)が求められる |
| 建設業許可(特定) | 国土交通大臣 | 一般より厳格な営業所要件がある |
判断のポイント:「独立した事務所スペース」の有無
取得できるかどうかを分ける最大の基準は、その許認可の要件に「独立した事務所スペース」が含まれているかどうかだ。
人材派遣業や有料職業紹介事業は、事務所の面積や設備について明確な基準が定められている。バーチャルオフィスは住所を利用するサービスであり、物理的な事務所スペースは提供されないため、こうした要件を満たすことができない。
一方、建設業許可(一般)や古物商許可は、「営業の本拠」としての住所があれば申請できるケースが多い。もちろん管轄によって運用が異なることはあるが、バーチャルオフィスの住所で許可が下りた実例は数多く存在する。
同じ種類の許認可でも、管轄の行政機関によって判断が異なることがある。たとえば古物商許可は、A県の警察署では問題なく通ったのに、B県では追加の説明を求められた、というケースもある。上の一覧はあくまで一般的な傾向であり、自分のケースについては必ず管轄に確認してほしい。
なぜバーチャルオフィスだと許認可が取れないのか
「なぜ住所を借りているだけでダメなのか」を理解しておくと、対策も立てやすくなる。
行政が求める「事務所要件」の本質
許認可制度における事務所要件は、大きく2つの目的を持っている。
1つ目は、消費者・労働者の保護だ。 人材派遣業を例にすると、派遣労働者の個人情報を扱うため、プライバシーが確保された専用の事務所が必要とされている。20平米以上という面積要件も、事業を適切に運営するための最低限のスペースとして設定されている。バーチャルオフィスでは、この物理的な保護環境を提供できない。
2つ目は、事業者の所在確認だ。 行政側は許認可の交付先が「確かにそこで事業を行っている」ことを確認したい。行政機関の立入検査に対応できる状態であることも、許認可の維持条件に含まれているケースがある。
つまり、許認可で事務所要件が課されている業種は、「そこに事務所がある」こと自体が法律の要請なのだ。バーチャルオフィスが悪いわけではなく、制度の趣旨上、物理的な事務所が不可欠ということになる。
許認可ごとに「事務所」の定義が違う
ややこしいのが、「事務所」に求められる要件が許認可ごとに異なる点だ。
建設業許可(一般)では、「営業所」として電話対応や契約締結ができる状態であれば認められるケースがある。一方、人材派遣業では、面積・設備・個室環境まで具体的に定められている。
このため、「バーチャルオフィスだから一律にダメ」というわけではなく、許認可の種類ごとに個別に判断する必要がある。だからこそ、管轄の行政機関への事前相談が重要なのだ。
許認可の要件は法改正や行政の運用変更で変わることがある。ネット上の情報だけで判断せず、必ず管轄の行政機関に最新の要件を確認しよう。特に古物商許可など、管轄によって判断が分かれる許認可は要注意だ。
許認可が必要な業種のバーチャルオフィス活用法
許認可の要件上、バーチャルオフィスだけでは申請が通らない。ではバーチャルオフィスはまったく使えないのかというと、そんなことはない。使い方を工夫すれば、許認可が必要な業種でもバーチャルオフィスのメリットを活かせる。
パターン1:主たる事務所は別に確保し、対外的な住所としてVOを使う
最もオーソドックスな方法がこれだ。
許認可の申請に必要な事務所は、自宅や賃貸オフィスで確保する。そのうえで、名刺やWebサイトに掲載する住所、登記上の本店所在地としてバーチャルオフィスの住所を使うパターンだ。
たとえば自宅で古物商の事業を行っている場合、許認可の「営業所」は自宅にしつつ、特定商取引法の表記やネットショップの事業者住所にはバーチャルオフィスの住所を使う。こうすれば自宅の住所をネット上に公開せずに済む。
特定商取引法の表記にバーチャルオフィスの住所を使えば、自宅住所をネット上に公開するリスクを回避できる。プライバシー保護と許認可の両立を考えるなら、この「営業所は自宅・対外的な住所はVO」の組み合わせが最もコスパが良い。
パターン2:レンタルオフィス(個室)との使い分け
事務所の面積や独立性が求められる許認可(人材派遣業など)の場合、個室タイプのレンタルオフィスを検討する価値がある。
レンタルオフィスは物理的な専用スペースが確保されるため、多くの許認可の事務所要件を満たせる。バーチャルオフィスとレンタルオフィスは別物なので、ここは混同しないようにしたい。
コストを抑えたい場合は、許認可申請用の事務所としてレンタルオフィスを契約しつつ、郵便物の転送や電話対応にはバーチャルオフィスのサービスを活用する、という組み合わせもアリだ。
バーチャルオフィスとレンタルオフィスの違いについては、バーチャルオフィスとレンタルオフィスの違いで詳しく解説している。
パターン3:自宅+バーチャルオフィスの併用
個人事業主や小規模法人であれば、自宅を許認可の事務所として申請し、バーチャルオフィスを併用するのが最も現実的だ。
古物商許可の場合、自宅を営業所として申請して許可を取得し、ネットショップの事業者表記にはバーチャルオフィスの住所を使う。許認可上は自宅が営業所、対外的にはバーチャルオフィスの住所を使うという二段構えだ。
このパターンなら、許認可の要件を満たしつつ、自宅住所の公開を避けるというバーチャルオフィスの本来のメリットも享受できる。
許認可の取得可否を確認する方法
「自分の業種でバーチャルオフィスが使えるのか」を確認するには、以下の3つの方法がある。
方法1:管轄の行政機関に直接相談する
これが最も確実だ。 許認可の管轄機関(都道府県庁、警察署、税務署など)に電話や窓口で相談すれば、バーチャルオフィスの住所で申請可能かどうかを教えてもらえる。
相談の際は以下の情報を伝えるとスムーズだ。
- 取得したい許認可の種類
- バーチャルオフィスの住所を使いたいこと
- 事業の概要
行政機関への相談は無料で、事前相談だからといって何かペナルティがあるわけでもない。「バーチャルオフィスの住所で申請したいのですが可能ですか」と率直に聞くのが一番早い。
行政機関への事前相談は無料で、相談したからといって申請義務が生じることもない。電話一本で済むケースがほとんどなので、ネットの情報で悩むよりまず管轄に問い合わせてみよう。
方法2:行政書士に相談する
許認可の申請手続きに詳しい行政書士に相談するのも有効な方法だ。
行政書士は許認可の申請を専門に扱っているため、バーチャルオフィスでの取得可否について実務的な知見を持っている。特に、管轄ごとの運用の違いや、過去の事例に基づいたアドバイスが得られるのが強みだ。
費用はかかるが、「申請してから却下された」というリスクを回避できると考えれば、投資する価値は十分にある。初回相談無料の行政書士事務所も多いので、まずは相談だけでもしてみるとよい。
方法3:バーチャルオフィスの運営会社に確認する
バーチャルオフィスの運営会社自体が、許認可との関係について情報を持っていることもある。
大手のバーチャルオフィスは多数の利用者を抱えているため、「この許認可は取得できた」「この業種では難しかった」といった事例情報を蓄積していることが多い。契約前の相談として問い合わせてみるのも一つの手だ。
ただし、運営会社は許認可の専門家ではない。あくまで参考情報として受け取り、最終判断は管轄の行政機関や行政書士に委ねるのが安全だ。
バーチャルオフィスの運営会社が「この許認可は取れます」と案内していても、最終的な判断は管轄の行政機関が行う。運営会社の情報だけを根拠に契約すると、後から許認可が取れなかったというリスクがある。
筆者のケース:IT系で許認可は不要だった
参考までに、筆者自身のケースを共有しておく。
筆者は2名でIT系の事業を運営している合同会社の代表だ。事業内容にITツールの開発・販売が含まれるが、許認可が必要な業種ではないため、バーチャルオフィスの利用に何の制約もなかった。
GMOオフィスサポートの東京都内の住所で合同会社を登記し、法人口座の開設、法人クレジットカードの発行まで問題なく完了している。利用歴は約半年で、年間コストは約3万円。許認可が不要な業種であれば、バーチャルオフィスの住所で事業運営に支障をきたすことはまずないと断言できる。
IT、Web制作、コンサルティング、デザイン、ライティング、EC運営(許認可不要な商品の場合)など、事務所の実態が求められない業種であれば、バーチャルオフィスは最もコスパの良い選択肢だと思う。
バーチャルオフィスが自分の業種で使えるか不安な方は、バーチャルオフィスは違法?合法的に使うための注意点もあわせて読んでみてほしい。法律面からの整理をしている。
まとめ
バーチャルオフィスで許認可が取れるかどうかは、許認可の種類次第だ。
- 取得可能:建設業許可(一般)、古物商許可、酒類販売業免許(通信販売)など
- 取得不可:人材派遣業、有料職業紹介事業、探偵業など「独立した事務所スペース」が要件のもの
- 判断基準は「独立した事務所スペース」の要件があるかどうか
- 許認可が必要な業種でも、自宅やレンタルオフィスとの併用でバーチャルオフィスのメリットを活かせる
- 取得可否の判断に迷ったら、管轄の行政機関に事前相談するのが最も確実
許認可が不要な業種であれば、バーチャルオフィスの利用に制限はない。筆者自身、IT系の事業でGMOオフィスサポートを利用しているが、許認可に関するトラブルは一切経験していない。
許認可が必要な業種の方も、「バーチャルオフィスだから全部ダメ」と諦める必要はない。事務所の確保方法を工夫すれば、バーチャルオフィスを組み合わせた運用は十分に可能だ。まずは管轄の行政機関に相談するところから始めてみてほしい。
法人登記の手順を知りたい方はバーチャルオフィスで法人登記する方法と注意点、開業届の出し方を知りたい方はバーチャルオフィスで開業届を出す方法も参考になると思う。バーチャルオフィスの比較は主要10社比較にまとめている。


