「事業用の住所は自宅とバーチャルオフィス、どっちにすべきか?」
これは個人事業主やフリーランス、マイクロ法人を立ち上げる人がほぼ必ず悩むポイントだ。
結論から言うと、住所を対外的に公開する必要があるならバーチャルオフィス一択である。法人登記、特定商取引法の表記、名刺やWebサイトへの記載など、住所が第三者の目に触れる場面がある場合、自宅住所を使うリスクは想像以上に大きい。
一方で、副業レベルで住所を公開する場面がないなら、自宅で十分というケースもある。
この記事では、バーチャルオフィスと自宅住所をプライバシー・信用度・費用の3軸で比較し、それぞれどんな人に向いているのかを整理する。
筆者は2名で合同会社を運営しており、GMOオフィスサポートの住所で法人登記している。自宅住所は一切公開していない。
バーチャルオフィスと自宅住所の比較一覧
まず全体像を把握するために、主要な比較ポイントを表にまとめた。
| 比較項目 | バーチャルオフィス | 自宅住所 |
|---|---|---|
| プライバシー | ◎ 自宅と完全に分離できる | × 住所が公開される |
| 費用 | 月額660円〜(年間約1万〜3万円) | 0円 |
| 信用度・ブランド | ◎ 都心一等地の住所が使える | △ 住宅地の住所になる |
| 法人登記 | ○ 問題なく可能 | ○ 可能(ただしリスクあり) |
| 銀行口座開設 | ○ 開設実績あり | ○ 問題なし |
| 郵便物の受取 | △ 転送に時間がかかる | ◎ 即日受取 |
| 来客対応 | △ オプション or 不可 | ○ 自宅で対応可能(ただし住所バレ) |
ここからは、それぞれの項目を詳しく掘り下げていく。
自宅住所を事業に使うリスク
自宅住所を事業に使う最大のメリットは「無料」であること。住所にお金をかけずに事業を始められるのは確かに大きい。
ただし、自宅住所を事業用に使うと以下のリスクが発生する。
リスク1:住所がネット上に公開される
法人登記すると住所が登記簿謄本に記載され、国税庁の法人番号公表サイトに掲載される。さらに、その情報を転載する民間の法人情報サイトにも自動的に掲載されるため、Google検索で自分の名前や会社名を検索すると自宅住所が表示される状態になる。
個人事業主の場合も、特定商取引法の表記でネットショップやサービスサイトに住所を記載する義務がある。
一度ネットに出た住所情報を完全に削除するのは非常に難しい。これが自宅住所を使う最大のリスクだ。
法人番号公表サイトや民間の法人情報サイトに掲載された住所は、後からバーチャルオフィスに変更しても過去の履歴として残り続ける。「とりあえず自宅で登記して、あとで変更すればいい」という考えは危険だ。
リスク2:家族の安全に関わる
事業を行っていれば、取引先とのトラブルやクレーム対応が発生することもある。相手がこちらの住所を知っている場合、自宅に押しかけてくる可能性もゼロではない。
筆者は2名で事業を運営しているが、「もし自宅住所で登記していたら、万が一のときに家族に迷惑がかかる」という点は事業を始める前から気になっていた。特にネット上でサービスを提供するIT系の事業では、不特定多数と接点を持つため、このリスクは決して無視できない。
リスク3:賃貸物件は事業利用NGの場合がある
自宅が賃貸物件の場合、契約上「住居用」として借りていることがほとんどだ。事業用として住所を使ったり、法人登記したりすることが契約違反になるケースは珍しくない。
バレなければ大丈夫と考える人もいるが、大家や管理会社に発覚した場合、契約解除を求められるリスクがある。登記簿は誰でも取得できるため、自宅住所での法人登記が管理会社の目に触れる可能性はゼロではない。
賃貸契約書の「用途」欄を確認しよう。「居住用」となっている場合、事業用途での使用や法人登記は契約違反になる可能性が高い。事前に管理会社へ確認するか、バーチャルオフィスの住所で登記するのが安全だ。
- 法人情報サイトやGoogle検索で自宅住所が公開される
- トラブル時に家族の安全に影響する可能性がある
- 賃貸物件では契約違反になるリスクがある
- 一度ネットに出た住所情報の削除は非常に困難
自宅住所のリスクについてもっと詳しく知りたい方は、自宅住所を公開したくない!バーチャルオフィスで解決する方法も参考にしてほしい。
バーチャルオフィスを使うメリット
次に、バーチャルオフィスを使うメリットを整理する。
メリット1:自宅住所を完全に守れる
バーチャルオフィスを使えば、法人登記・開業届・特定商取引法の表記すべてにバーチャルオフィスの住所を使用可能だ。自宅住所がネット上に公開されることはない。
筆者もGMOオフィスサポートの東京都内の住所で合同会社を登記しており、自宅住所は公開情報に一切出ていない。「住所が公開されている」というストレスがゼロなのは、事業に集中するうえで想像以上に大きいメリットだった。
メリット2:都心一等地の住所が使える
バーチャルオフィスの多くは、渋谷・新宿・銀座・梅田といった都心のビジネス街に住所を構えている。
自宅が郊外の住宅地でも、名刺やWebサイトに都心の住所を記載できる。これは取引先やクライアントからの信用度に少なからず影響する。実際、地方の住宅地の住所より、東京都心のビジネスエリアの住所のほうが「しっかりした会社だ」という印象を与えやすいのは事実だ。
メリット3:銀行口座・クレカも問題なく開設できる
「バーチャルオフィスの住所だと銀行口座が開設できないのでは?」と不安に思う方は多いが、実際には問題ない。
筆者はバーチャルオフィスの住所でGMOあおぞらネット銀行の法人口座を一発で開設した。申し込みから約1週間で審査が通り、バーチャルオフィスであることを理由に追加書類を求められることもなかった。
その後、三井住友カード ビジネスオーナーズも一発で審査通過している。バーチャルオフィスだからといって社会的な手続きに支障が出ることは、筆者の経験上なかった。
「バーチャルオフィスだと銀行口座が開設できない」という情報は過去のもの。現在はGMOあおぞらネット銀行や住信SBIネット銀行など、バーチャルオフィス住所での開設実績が豊富なネット銀行が複数ある。
銀行口座開設について詳しくは、バーチャルオフィスで銀行口座は開設できる?で解説している。
バーチャルオフィスのデメリットも正直に書く
良い点ばかり書いても信用できないと思うので、実際に使って感じたデメリットも正直に共有する。
郵便物の受取にタイムラグがある
自宅なら届いた瞬間に受け取れるが、バーチャルオフィスは転送プランに応じたタイムラグが発生する。
筆者は週1転送プラン(月額2,750円)を利用しているが、急ぎの書類でなければ特に困ることはない。ただ、「何が届いたか」をすぐに確認できないのは地味に不便だ(GMOオフィスサポートの場合、届いた郵便物の写真を確認するには月額+1,100円のオプション加入が必要)。
頻繁に急ぎの郵便物がある場合は、来店受取に対応しているサービスを選ぶか、そもそも物理オフィスを検討したほうがいいかもしれない。
郵便物の受取頻度が低い事業(IT系・Web系など)であれば、転送の遅延はほぼ問題にならない。契約書類などの重要書類だけ速達指定にしておけば、実務上困る場面はかなり限られる。
月額費用はかかる
自宅住所なら0円だが、バーチャルオフィスは最安でも月額660円〜の費用が発生する。法人登記対応プランだと月額数千円程度だ。
筆者の場合、年間コストは約3万円。東京都内で賃貸オフィスを借れば月額10万円以上かかることを考えれば圧倒的に安いが、自宅と比較すればコストは増える。ここは「プライバシーに月額数千円の価値があるか」という判断になる。
住所を他人と共有する
バーチャルオフィスの住所は複数の利用者が共有している。住所を検索すると同じ住所を使っている他社が表示される可能性はある。
ただし、これはコワーキングスペースやシェアオフィスでも同じこと。バーチャルオフィス特有のデメリットではない。住所が共有であることが気になる方は、バーチャルオフィスはバレる?も読んでみてほしい。
「自宅でいい人」と「バーチャルオフィスにすべき人」の判断基準
ここまでの比較を踏まえて、どちらを選ぶべきかの判断基準を整理する。
自宅住所で問題ないケース
- 住所を対外的に公開する場面がない(副業・趣味レベル)
- 持ち家で事業利用の制限がない
- 自宅住所が公開されても気にならない
- とにかくコストをゼロに抑えたい
副業でブログやアフィリエイトをやっている程度なら、住所を公開する義務はないので自宅で十分だ。
バーチャルオフィスにすべきケース
- 法人登記を予定している
- ネットショップや有料サービスを提供する(特定商取引法の表記が必要)
- 自宅住所の公開に抵抗がある
- 賃貸物件に住んでおり事業利用NGの可能性がある
- 都心の住所でブランディングしたい
住所がどこかに公開される事業であれば、バーチャルオフィスを強くおすすめする。月額数百円〜数千円で自宅住所を守れるなら、そのコストは保険として安すぎるくらいだ。
「今は住所を公開する予定がない」という方でも、事業が成長すれば法人化やEC展開で住所公開が必要になる場面は出てくる。後から自宅住所をバーチャルオフィスに変更するのは、本店移転登記(登録免許税3万〜6万円)が必要になるので、最初からバーチャルオフィスにしておくほうが結果的に安上がりだ。
筆者がバーチャルオフィスを選んだ理由
筆者は合同会社を設立する際、迷わずバーチャルオフィスを選んだ。
プライバシー確保が最優先だった
一番の理由はプライバシーの確保だ。IT系の事業をネット上で展開するため、法人登記した住所は法人番号公表サイトを通じてネット上に公開される。ここに自宅住所を載せるリスクは、2名で事業を運営している筆者にとって受け入れられるものではなかった。
GMOオフィスサポートを選んだ決め手
サービス選びではDMMバーチャルオフィスとGMOオフィスサポートで迷ったが、初期費用0円・郵便転送料込みという料金体系と、Xで「GMOの住所だと銀行口座が開設しやすい」という口コミを見て、GMOオフィスサポートに決めた。
実際の手続きはすべてスムーズだった
実際、申し込みの翌日に審査完了。その後バーチャルオフィスの住所でGMOあおぞらネット銀行の法人口座を約1週間で開設、三井住友カード ビジネスオーナーズも一発で審査通過と、事業に必要な手続きはすべてスムーズに進んだ。
年間コスト約3万円で自宅住所を完全に守れているので、大きな後悔はない。むしろ、もし自宅住所で登記していたらと思うとゾッとする。
バーチャルオフィスの選び方で迷っている方は、バーチャルオフィスおすすめ8選|料金・機能を徹底比較で主要サービスを比較しているので参考にしてほしい。フリーランスの方にはフリーランス向けバーチャルオフィスの選び方、コストを重視する方には格安バーチャルオフィスおすすめもある。
まとめ
バーチャルオフィスと自宅住所、どっちを選ぶかは「住所を対外的に公開するかどうか」で判断するのがシンプルだ。
- 自宅住所を事業に使うと、ネット上に住所が公開されるリスクがある
- バーチャルオフィスなら月額660円〜でプライバシーを守れる
- バーチャルオフィスの住所でも法人登記・銀行口座・クレカ開設は問題なし
- 後から住所変更すると登記費用(3万〜6万円)がかかるため、最初からVOを使うほうが合理的
住所を公開する場面が一つでもあるなら、バーチャルオフィスを選んでおいて損はない。月額数百円〜数千円の出費で自宅住所を守れるなら、十分すぎる投資だ。
バーチャルオフィスの基本的な仕組みから知りたい方は、バーチャルオフィスとは?仕組み・メリット・デメリットを解説から読み始めるのがおすすめである。


