結論から言うと、バーチャルオフィスの住所でも融資を受けることは可能だ。 ただし、実体のあるオフィスと比較すると審査で不利に働く場面があるのも事実である。
「バーチャルオフィスだと融資は無理なのでは?」と不安に感じている方は多いと思う。僕自身、GMOオフィスサポートの住所で合同会社を運営しており、将来的に融資を受ける可能性も考えてかなり調べた。
この記事では、バーチャルオフィスが融資審査にどう影響するのか、日本政策金融公庫や銀行融資の対応状況、そして審査で不利にならないための具体的な対策をまとめる。
IT系の事業を2名で運営している。融資の実体験はないが、事前に調べた情報をもとに客観的にまとめている。銀行口座・クレカはバーチャルオフィスの住所で問題なく開設済みだ。
バーチャルオフィスが融資審査に与える影響
まず、バーチャルオフィスの住所が融資審査でどう見られるのかを整理しておく。
金融機関が気にするのは「事業の実態」
金融機関が融資審査で重視するのは、その事業が本当に存在していて、継続的に活動しているかどうかだ。融資したお金がきちんと返済される見込みがあるかを判断するために、事業の実態確認は避けて通れない。
バーチャルオフィスは住所を借りるサービスなので、その住所に行っても実際のオフィスがあるわけではない。この点が金融機関にとって「本当に事業をやっているのか?」という疑問につながる。
つまり、バーチャルオフィスだから融資がNGになるのではなく、事業の実態が確認しにくいことが審査上のハードルになるということだ。
バーチャルオフィスの住所だけで事業活動の実態がまったく示せない状態だと、融資審査では大きなマイナスになる。売上実績や取引先との契約書など、事業が実際に動いている証拠を準備しておくことが重要だ。
融資の種類によって影響度が違う
バーチャルオフィスが融資に与える影響は、融資の種類によって異なる。ざっくり言うと以下のような傾向がある。
| 融資の種類 | バーチャルオフィスでの難易度 | 補足 |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫(創業融資) | やや不利だが可能 | 事業計画と面談で判断される |
| 信用保証協会付き融資 | やや不利 | 自治体の制度融資など |
| 銀行のプロパー融資 | かなり厳しい | 実績と信用が必要 |
| ビジネスローン(ノンバンク) | 比較的通りやすい | 金利は高め |
創業期に最も現実的なのは日本政策金融公庫の創業融資だ。ここについては次のセクションで詳しく解説する。
日本政策金融公庫はバーチャルオフィスでも融資可能か
創業融資といえば日本政策金融公庫。バーチャルオフィスで起業した人にとって、ここの対応は一番気になるところだろう。
一律NGではない
結論から言うと、日本政策金融公庫はバーチャルオフィスだから一律NGという対応はしていない。
日本政策金融公庫の融資審査は、住所の形態よりも「事業計画の妥当性」「自己資金の状況」「事業の実態」を総合的に判断する。バーチャルオフィスの住所で融資を受けている事例は、税理士のブログや士業の情報発信でも複数確認できる。
ただし、実体のあるオフィスを構えている場合と比べると、追加で確認される事項が増える傾向があるというのが実情だ。
面談と実態確認がポイントになる
日本政策金融公庫の融資審査では、必ず面談がある。バーチャルオフィスを利用している場合、この面談で以下のような点を確認される可能性がある。
- なぜバーチャルオフィスを利用しているのか(コスト削減、業種的に実オフィスが不要など)
- 実際にどこで業務を行っているのか(自宅、コワーキングスペースなど)
- 事業の実態を示す資料があるか(売上実績、取引先との契約書、請求書など)
バーチャルオフィスを使う合理的な理由を説明できれば問題ない。IT系やコンサルティングなど、物理的なオフィスが不要な業種であれば「コスト効率のためにバーチャルオフィスを使い、実務は自宅で行っている」という説明は十分に合理的だ。
日本政策金融公庫の面談では、事業計画書の内容を中心にヒアリングされる。バーチャルオフィス利用者の場合は「実際の作業場所」について追加で聞かれることがある。自宅で業務を行っているなら、自宅の作業環境の写真を用意しておくと説明がスムーズだ。
自己資金と事業計画が最重要
バーチャルオフィスかどうかよりも、日本政策金融公庫の創業融資で最も重視されるのは自己資金の額と事業計画の質だ。
一般的に、融資希望額の3分の1程度の自己資金が求められると言われている。事業計画書では、売上見込みの根拠、資金使途の明確さ、返済計画の妥当性が見られる。
正直なところ、これらがしっかりしていれば、バーチャルオフィスであること自体はそこまで大きなマイナスにはならない。逆に言えば、実体のあるオフィスを構えていても、事業計画がザルなら融資は通らない。
銀行融資の場合はより厳しい傾向がある
日本政策金融公庫と比べて、民間の銀行融資はバーチャルオフィスに対してより慎重な姿勢を取る傾向がある。
メガバンクのプロパー融資はハードルが高い
メガバンク(三菱UFJ、みずほ、三井住友)のプロパー融資は、そもそも創業間もない会社には敷居が高い。そこにバーチャルオフィスという要素が加わると、さらにハードルが上がる。
これはバーチャルオフィスで銀行口座は開設できる?の記事でも触れたが、メガバンクは「事業所の実態」を重視する傾向が強い。口座開設ですらハードルがあるのだから、融資となればなおさらだ。
信用保証協会付き融資は可能性あり
自治体の制度融資(信用保証協会の保証付き)であれば、バーチャルオフィスの住所でも融資を受けられる可能性はある。ただし、信用保証協会も事業の実態確認を行うため、バーチャルオフィスだと追加の説明を求められるケースがある。
自治体によって対応が異なるため、事前に窓口で相談しておくのが無難だ。
ノンバンクのビジネスローンは比較的通りやすい
審査のスピードと柔軟さを求めるなら、ノンバンク(消費者金融系)のビジネスローンという選択肢もある。バーチャルオフィスの住所でも比較的審査が通りやすい。
ただし、金利が年10〜18%と高いので、長期の事業資金として使うには向いていない。短期のつなぎ資金や、どうしても急ぎで資金が必要な場面に限定して検討すべきだろう。
ノンバンクのビジネスローンは審査が通りやすい反面、金利が日本政策金融公庫(年1〜3%程度)の数倍にのぼる。安易に利用すると返済負担が経営を圧迫するリスクがあるため、まずは日本政策金融公庫や自治体の制度融資を検討しよう。
バーチャルオフィスで融資審査を不利にしないための対策
バーチャルオフィスを利用しつつ融資を受けたい場合、事前にできる対策はいくつかある。
事業計画書を入念に作り込む
融資審査の合否を分けるのは、結局のところ事業計画の説得力だ。バーチャルオフィスであることのハンデを補うには、事業計画書の質を上げるのが最も効果的である。
具体的には以下の点を明確にしておきたい。
- 事業の具体的な内容と収益モデル
- 売上見込みの根拠(既存の顧客がいるなら契約書や実績)
- 資金使途の内訳(何にいくら使うのか)
- 返済計画(毎月の返済額と、それを賄える売上根拠)
実際の作業場所を明確にする
面談で「どこで業務をしているのか」と聞かれたときに、具体的に答えられるようにしておく。
自宅で業務を行っているなら、自宅の作業環境を説明できるようにしておくこと。コワーキングスペースを利用しているなら、利用契約の書類があるとベターだ。
**「バーチャルオフィスの住所は登記と郵便受取のため、実務は自宅で行っている」**と合理的に説明できれば、金融機関も納得しやすい。
事業実績を先に作る
可能であれば、融資を申し込む前に売上実績を作っておくのが効果的だ。
創業融資は実績がなくても申し込めるが、数ヶ月でも売上実績があると審査の説得力が格段に上がる。「まだ売上ゼロだけど融資がほしい」という状態と、「すでに月○万円の売上がある状態で、事業拡大のために追加資金がほしい」という状態では、金融機関の印象がまるで違う。
税理士に相談する
融資申し込みの際は、税理士や認定支援機関に相談するのが強くおすすめだ。
特に認定経営革新等支援機関(認定支援機関)を通じて申し込むと、日本政策金融公庫の「中小企業経営力強化資金」が利用でき、金利が優遇されるケースもある。バーチャルオフィス利用者の融資相談実績がある税理士であれば、審査のポイントも把握しているはずだ。
認定支援機関の多くは初回相談が無料だ。融資を検討し始めた段階で早めに相談しておくと、事業計画書のブラッシュアップや必要書類の準備をサポートしてもらえる。バーチャルオフィス利用の説明方法についてもアドバイスがもらえるだろう。
- 事業計画書の作成(売上根拠・資金使途・返済計画を明確に)
- 自己資金の確認(融資希望額の3分の1が目安)
- 事業実績の整理(売上がある場合は帳簿・請求書を準備)
- 税理士または認定支援機関への事前相談
- 会社のWebサイトの整備(事業内容がわかるページ)
融資を視野に入れたバーチャルオフィスの選び方
将来的に融資を受ける可能性があるなら、バーチャルオフィス選びの段階で意識しておくべきポイントがある。
大手運営のサービスを選ぶ
金融機関は融資審査でバーチャルオフィスの運営元もチェックする可能性がある。運営元が東証プライム上場のGMOグループや、DMMのような大手であれば、サービスの信頼性そのものが審査にプラスに働く。
逆に、運営元がよくわからない格安サービスだと、金融機関側の心証は良くない。融資を考えているなら、月額を数百円節約するより、信頼性のあるサービスを選ぶ方が長期的にはメリットが大きい。
僕がGMOオフィスサポートを選んだ理由の一つも、この「運営元の信頼性」だった。バーチャルオフィスの信用は?の記事でも書いたが、住所を借りるサービスだからこそ、信頼性は最優先にしたほうがいい。
金融機関はバーチャルオフィスの住所をネットで検索することがある。同じ住所を多数の企業が登記している格安サービスは、それだけで「ペーパーカンパニーでは?」と疑われるリスクがある。運営元の実績や知名度は、間接的に融資審査に影響する要素だ。
有人受付・面談スペースがあるサービスを検討する
融資面談の際に、「オフィスの実態」を見せられると審査に有利だ。
例えばナレッジソサエティは、千代田区の銀行所有ビルに有人受付がある。来客対応もしてもらえるため、金融機関の担当者が訪問しても「ここが事業所です」と案内できる。会議室も利用できるので、面談場所としても使える。
レゾナンスも全店舗に会議室を完備しており、必要に応じて面談スペースとして活用できる。
正直なところ、IT系のように完全リモートで業務が完結する業種であれば、ここまで考える必要はないかもしれない。ただ、融資額が大きい場合や、金融機関との関係を重視したい場合は、こうしたオプションがあるサービスを選んでおくと安心だ。
法人登記対応は必須
融資を受けるなら法人口座が前提になるし、法人口座の開設には法人登記が必要だ。つまり、法人登記に対応したバーチャルオフィスを選ぶのは大前提である。
法人登記対応のバーチャルオフィスについてはバーチャルオフィスで法人登記する方法で詳しく解説しているので、これから法人設立を考えている方は参考にしてほしい。
まとめ:バーチャルオフィスでも融資は受けられるが、準備が重要
バーチャルオフィスの住所だからといって、融資が一律で受けられないということはない。ただし、実体のあるオフィスと比較すると審査上のハンデがあるのは事実だ。
ポイントを整理すると以下の通りである。
- 日本政策金融公庫は一律NGではない。事業計画と面談で総合的に判断される
- 銀行のプロパー融資はハードルが高い。創業期は日本政策金融公庫が現実的
- 事業計画書の質と自己資金が最重要。住所の形態よりもこちらが合否を左右する
- バーチャルオフィスを使う合理的な理由を説明できるようにしておくことが大切
- 大手運営のサービスや有人受付があるサービスを選ぶと融資審査でプラスに働く
僕自身は融資を受けた経験はないが、バーチャルオフィスの住所で銀行口座もクレジットカードも問題なく開設できている。金融機関との付き合いにおいて、バーチャルオフィスが致命的な障害になることはないというのが、調べた結果としての実感だ。
将来の融資を見据えてバーチャルオフィスを選ぶなら、信頼性の高い大手サービスを選んでおくのが無難である。サービス比較はバーチャルオフィス主要10社比較で詳しくまとめているので、あわせて参考にしてほしい。
これからバーチャルオフィスで起業を考えている方は、起業時におすすめのバーチャルオフィスの記事もチェックしてみてほしい。


